-秘密のページ-
未完成のものやらなんやらの一時的置場。



 九番目の魔王

 雫編後の話。
 欠片としての力を目覚めさせた葉河に、果観はひとつの依頼を与える。

 それは、とある紋中紋で起こった事件の調査。

 そこで出会った一人の少女を葉河は保護する。
 葉河を主人公とした物語。

 少女こそが、人工的に作り出された第九の魔王。
 あらゆる存在を崩壊させる権能を持った彼女は、葉河に惹かれていく。
 作られた存在ゆえの不安定性。感情を操作され、少女は葉河に牙を剥く。
 だが、少女は葉河に対して芽生えた恋心からそれを否定、自らを制御することもできず暴走する。
 すべてを崩壊させていく力を無秩序にばらまく少女に、葉河は告げる。

「俺も、父と母のことをほとんど知らない」
「俺にとっての父さんは瀞の父親で、俺にとっての母さんは、瀞の母親だから」
「だから、聞いた話だ」
「俺の母も、名前を持たない魔王だった。ただただ何かを求めて、戦い続けるだけの存在だった」
「そんな母に、父は戦いを挑んで、そして心を通じ合わせた」
「父は、母に名を与えたらしい。縦羽たては――チョウの名を」
「だから、俺もお前に名を送るよ」
「お前の名は――せせり」

「せ、せ、り?」

「そう。せせりだ。鱗翅目セセリチョウ科からとった名前だ」

「あ、は……」
「よーかは、ネーミングセンスないなぁ」

「あぁ、そうだな……女の子にチョウの名前なんて、センスないよな……」

「ほんとうに、ね。でも、しかたないから、もらってあげる」
「よーか」

「なん、だよ……」

「ありがとう」
「始まりは悲劇だったけど、終わりは――しあわせだよ」

「終わりだなんて!」

「ねぇ、お願い」
「よーか。呼んでくれないかな。よーかがつけてくれた名前で」

「せせり……せせり!」

「ああ……番号じゃなくて、名前で呼んでもらえるのが、こんなに、うれし、な、て……」

 ――ありがとう。それに、ごめんね、よーか。

 それが、最期。

 彼女の、せせりの声は、もう――聞こえることはなかった。

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